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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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543/615

葵に教える

あっという間に半年が過ぎた。


店内は、ほぼ形になった。

照明は本設に変わり、

カウンターの木目も落ち着いた色を帯びている。


水曜の完全予約制も、

プラネタリウムの一時間も、

予約フォームも、

全部“使える形”になった。


(……ここまで来たな)


大和は、編集し終えたリールをもう一度確認した。


- カウンターに落ちる柔らかい光

- テラスの手すりをかすめる海風

- グラスの影

- まだ名前のないカクテルの揺れ

- プラネタリウムの試験投影の一瞬


場所は分からない。

でも、“灯-OTARU-”の空気は確かに映っている。


投稿文も書き直した。


> 灯-Hokkaido-

> 少しずつ、形になってきました。


(……送るか)


大和はDMを開いた。


葵とのやり取りは、

この半年、途切れなかった。


「雪が降ったよ」

「今日は風が強い」

「そっちは暖かい?」


そんな他愛もない言葉だけ。

店のことは一度も言えなかった。


でも今日は違う。


大和は、短く打った。


---

今日の夜、投稿するよ。

見てもらえたら嬉しい。

---


押しつけではない。

ただ、素直な一言。


送信ボタンを押す指が、

ほんの少しだけ震えた。


(……伝わるかな)


画面を伏せ、

大和は深く息を吸った。


灯りは、

もうすぐ本当に灯る。

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