葵に教える
あっという間に半年が過ぎた。
店内は、ほぼ形になった。
照明は本設に変わり、
カウンターの木目も落ち着いた色を帯びている。
水曜の完全予約制も、
プラネタリウムの一時間も、
予約フォームも、
全部“使える形”になった。
(……ここまで来たな)
大和は、編集し終えたリールをもう一度確認した。
- カウンターに落ちる柔らかい光
- テラスの手すりをかすめる海風
- グラスの影
- まだ名前のないカクテルの揺れ
- プラネタリウムの試験投影の一瞬
場所は分からない。
でも、“灯-OTARU-”の空気は確かに映っている。
投稿文も書き直した。
> 灯-Hokkaido-
> 少しずつ、形になってきました。
(……送るか)
大和はDMを開いた。
葵とのやり取りは、
この半年、途切れなかった。
「雪が降ったよ」
「今日は風が強い」
「そっちは暖かい?」
そんな他愛もない言葉だけ。
店のことは一度も言えなかった。
でも今日は違う。
大和は、短く打った。
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今日の夜、投稿するよ。
見てもらえたら嬉しい。
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押しつけではない。
ただ、素直な一言。
送信ボタンを押す指が、
ほんの少しだけ震えた。
(……伝わるかな)
画面を伏せ、
大和は深く息を吸った。
灯りは、
もうすぐ本当に灯る。




