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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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大和の変化

大和はまたスマホを開いてしまった。


葵からの返事はまだない。


(……まあ、仕事中だよな)


そう思いながら、

自分が送った二行のDMを見返す。


> 正直嬉しいよ。

> ありがとう。


(……俺、なんでこんなこと言ったんだ)


普段の自分なら絶対に言わない。

感情を言葉にするのは得意じゃないし、

必要以上に踏み込むことも避けてきた。


美咲を亡くしてからは、

なおさらだった。


誰かに気を遣うことも、

誰かに気を遣われることも、

どこか遠い世界の話みたいで。


ただ淡々と、

仕事をして、

日々を積み重ねてきた。


(……なのに)


葵の

「嬉しかったと思います」

という一言が、

胸の奥に静かに落ちてきて。


気づいたら、

素直に返していた。


(つられたんだろうな……あのまっすぐさに)


ふと、

灯 -Hokkaido- コンセプトが頭に浮かぶ。


灯 -tokyo- は、

“言葉の代わりに出す一杯” がコンセプトだった。


でも北海道の(あかり)は、

気づけば違う方向に進んでいた。


“言葉を伝える背中を押す一杯”


(……俺が変わってきてるのか)


そう思うと、

少しだけ怖い。


長い間、

誰かの気持ちに触れずに生きてきた。

触れられることもなかった。


だから今、

誰かの言葉で心が動くことに、

戸惑いがある。


でも──

嫌じゃない。


むしろ、

どこか温かい。


大和はスマホを伏せ、

深く息を吐いた。


(……仕事に戻らないとな)


胸の奥の揺れを抱えたまま、

戻っていった。

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