大和の変化
大和はまたスマホを開いてしまった。
葵からの返事はまだない。
(……まあ、仕事中だよな)
そう思いながら、
自分が送った二行のDMを見返す。
> 正直嬉しいよ。
> ありがとう。
(……俺、なんでこんなこと言ったんだ)
普段の自分なら絶対に言わない。
感情を言葉にするのは得意じゃないし、
必要以上に踏み込むことも避けてきた。
美咲を亡くしてからは、
なおさらだった。
誰かに気を遣うことも、
誰かに気を遣われることも、
どこか遠い世界の話みたいで。
ただ淡々と、
仕事をして、
日々を積み重ねてきた。
(……なのに)
葵の
「嬉しかったと思います」
という一言が、
胸の奥に静かに落ちてきて。
気づいたら、
素直に返していた。
(つられたんだろうな……あのまっすぐさに)
ふと、
灯 -Hokkaido- コンセプトが頭に浮かぶ。
灯 -tokyo- は、
“言葉の代わりに出す一杯” がコンセプトだった。
でも北海道の灯は、
気づけば違う方向に進んでいた。
“言葉を伝える背中を押す一杯”
(……俺が変わってきてるのか)
そう思うと、
少しだけ怖い。
長い間、
誰かの気持ちに触れずに生きてきた。
触れられることもなかった。
だから今、
誰かの言葉で心が動くことに、
戸惑いがある。
でも──
嫌じゃない。
むしろ、
どこか温かい。
大和はスマホを伏せ、
深く息を吐いた。
(……仕事に戻らないとな)
胸の奥の揺れを抱えたまま、
戻っていった。




