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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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期待してしまう

大和のスマホが光っている。


葵からの返信だ。


---

とんぼ返りだったんですね。

それは大変でしたね……お疲れさまです。


気を遣わせちゃいそうって思ってくれたのは、

なんとなく分かります。

でも、教えてくれたら……

たぶん、嬉しかったと思います。


忙しい中、返してくれてありがとうございます。

---


読み終えた瞬間、

胸の奥が、ふっと揺れた。


(……“嬉しかったと思います”って、なんだ)


言葉は丁寧で、

大人で、

責めているわけでもない。


でもその一行だけ、

ほんの少しだけ温度が違った。


(……期待してる、ってことなのか?)


いや、そんなはずはない。

別にそういう関係じゃない。

たまにDMをするだけで。


でも──


ギムレットの写真を見たときの胸のざわつき。

あの言いようのない感情。


そして今、

“嬉しかったと思います”

という言葉に、

こんなにも心が動いている自分。


(……俺、何を期待してるんだ)


自分で自分に苦笑する。


けれど、

その苦笑の奥にある感情は、

否定しきれなかった。


大和はスマホを握り直し、

画面を見つめたまま、

しばらく動けなかった。


(……返さないと、だよな)


でも、

どう返せばいいのか分からない。


“嬉しかったと思います”

その一言が、

頭の中で何度も反芻される。


大和はゆっくり息を吐き、

胸の奥の揺れを落ち着かせようとした。


(……落ち着け)


そう言い聞かせても、

震える指先で返信を打った。


---

正直嬉しいよ。

ありがとう。

---

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