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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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葵の本音が漏れる

休憩室の隅。

葵はスマホを開き、

大和からの通知に気づいた。


(返ってきた……)


胸が少しだけ跳ねる。

でも、落ち着け、と自分に言い聞かせながらDMを開いた。


---

実は、本社から当日に連絡があって。

少しだけ顔を出してほしいって言われて、

昼の便で行って、そのまま最終便で戻ったんだ。

本当にとんぼ返りだったよ。


言えばよかったんだけど……

時間が読めなかったし、

及川さんも仕事だっただろうから、

気を遣わせちゃいそうで。


返事遅くなってごめん。

---


(……え、長い)


思わず声が漏れた。


大和のDMはいつも短い。

必要なことだけ、簡潔に。

それが大和らしさだと思っていた。


なのに今日は、

珍しく、ちゃんと説明してくれている。


(……気を遣わせちゃいそうで、って)


そこを読んだ瞬間、

胸の奥がふっと温かくなった。


言ってくれなかった寂しさはある。

でも、

“言わなかった理由”がちゃんとあって、

しかもそれが

自分への気遣いだった

と知ってしまったら──


(……ずるいなぁ)


いじけていた気持ちが、

少しだけ溶けていく。


でも、全部は溶けない。

ちょっとだけ、まだ拗ねていたい。


葵はスマホを持ち直し、

ゆっくりと文字を打ち始めた。


---

とんぼ返りだったんですね。

それは大変でしたね……お疲れさまです。


気を遣わせちゃいそうって思ってくれたのは、

なんとなく分かります。

でも、教えてくれたら……

たぶん、嬉しかったと思います。


忙しい中、返してくれてありがとうございます。

---


送信ボタンを押す前、

葵は一度だけ深呼吸した。


(……伝わるかな)


ほんの少しの寂しさと、

ほんの少しの嬉しさと、

ほんの少しの期待。


全部を混ぜたような気持ちで、

そっと送信した。

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