灯-Hokkaido- のコンセプト案
厨房の奥。
新店舗のメニュー案が広げられたテーブルの前で、
大和はひとり、静かにペンを走らせていた。
「……灯の象徴、か」
東京の夜の灯 -tokyo- では、
“言葉の代わりに出す一杯”が店の顔だった。
北海道でも、その魂は残したい。
けれど、ただ同じものを持ってくるだけでは意味がない。
大和は、ふと手を止めた。
(今の灯は……“今と少し前の融合”か)
そう思った瞬間、
胸の奥に、あの頃の空気がふっと蘇る。
19歳の葵。
まだ飲めなくて、
ホットドリンクを両手で持っていた姿。
(……懐かしいな)
大和は小さく息を吐き、
メニューの余白に3つの言葉を書き込んだ。
「出会えた奇跡」
「溢れる幸せ」
「これからも一緒にいたい」
意味が先に浮かんだ。
レシピは後でいい。
灯の一杯は、味より“想い”が本体だから。
「……ノンアルも、用意しておくか」
北海道は車の人が多い。
それに──
飲めなかった“あの頃”の誰かのためにも。
そう思った理由を、
大和自身は深く考えなかった。
─けれど、
書き終えたページを眺めながら、
胸の奥に小さなざらつきが残った。
(……なんだろうな、この感じ)
言葉にはできない。
でも、どこか“決まりきっていない”気がした。
大和はその違和感を振り払うように、
そっとノートを閉じた。




