灯-tokyo- 最終日
仕事を終えて、電車に揺られながら、
なんとなくスマホを開いた。
SNSのタイムラインに、
見慣れたロゴがふっと流れてくる。
「灯 -tokyo- 延長期間終了のお知らせ」
その一文を見た瞬間、
胸の奥がきゅっと縮まった。
(……今日、最終日だったんだ)
知らなかった。
知っていたら、仕事の合間にでも顔を出したのに。
投稿をタップすると、
スタッフたちの集合写真が表示された。
その端に──
見覚えのある横顔が写っていた。
大和だった。
(……来てたんだ)
思わず息が止まる。
延長期間中はずっと不在だったはずなのに。
北海道に戻って、もう東京にはいないと思っていたのに。
なのに、
最終日だけ、ひっそりと顔を出していた。
(……教えてくれればいいのに)
胸の奥がじんわり熱くなる。
言ってくれたら、
どんなに遅くなっても駆けつけたのに。
でも──
店長は言わない人だ。
昔から、
期待させるようなことはしない。
余計なことも言わない。
優しさを見せるときほど、黙ってしまう。
(なんで……言わなかったんだろう)
問いは浮かぶのに、
答えはどこにもない。
写真の中の大和は、
スタッフに囲まれて、少し照れたように笑っていた。
その笑顔を見て、
胸の奥がまたきゅっとなる。
(……ちょっとだけ、近づけたと思ったのにな)
このあいだのDM。
あの“しみじみ”という言葉。
18年前の記憶がふっと重なった瞬間。
あれは、
私だけの勘違いだったのかな。
電車の窓に映る自分の顔は、
少しだけ寂しそうで、
でもどこか温かかった。
(……会いたかったな)
小さくつぶやいて、
スマホをそっと閉じた。




