送信した気持ち
翌日。
朝からずっと、
胸の奥がそわそわしていた。
昨夜、
やっと整えたDMの文章。
「これなら送れる」
そう思ったはずなのに、
いざ送るとなると、
心臓が落ち着かない。
(……今日、送るって決めたんだから)
葵は自分に言い聞かせるように、
そっとスマホを取り出した。
昼休み。
社食のざわめきが遠く感じる。
大和からのDMを開く。
その下に、
自分が貼り付けた文章が並んでいる。
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「グラスホッパーは前から気になっていて、
あの日はちょっと勇気を出して頼みました。
ミントの香りがして、甘くて、でも軽くて、
飲んだ瞬間に気持ちがふっと楽になりました。
味はすごく好きでした。
また飲みたいなって思いました。
店長は、グラスホッパー飲まれたことありますか?」
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読み返すたびに、
胸がきゅっとなる。
(……変じゃないよね)
(大丈夫だよね)
(これなら、普通……だよね)
でも、
最後の一行だけは、
どうしても胸が熱くなる。
“店長は、グラスホッパー飲まれたことありますか?”
それは、
ほんの少しだけ前のめりな問いかけ。
会話を続けたいという気持ちが、
にじんでしまった一行。
(……でも、これだけは残したかった)
葵は深呼吸をした。
送信ボタンの上で、
指が止まる。
心臓がどくん、と跳ねる。
(……送るね)
小さく呟いて、
そっと押した。
画面が
“送信済み”
に変わる。
その瞬間、
胸の奥がじんわり熱くなった。
(……送っちゃった)
スマホを伏せる。
でもすぐにまた手に取ってしまう。
(返事……来るかな)
期待と不安が入り混じったまま、
葵は小さく息を吐いた。




