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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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止まらない思い

「グラスホッパーは前から気になってて、

 あの日はちょっと勇気を出して頼みました。

 ミントの香りがして、甘くて、でも軽くて、

 飲んだ瞬間に気持ちがふっと楽になって……

 “幸せ”って書いてあったので、

 なんか、あの日のことを思い出してしまって……

 店長の投稿も思い出して……

 あ、すみません、変なこと言ってますね……

 味はすごく好きでした。

 また飲みたいなって思いました。


 ……なんで今北海道なんですか。

 遠いです。」


---


書き終えた瞬間、

葵は固まった。


(……長っ!!

 ていうか、気持ち出すぎ……!

 こんなの送れない……!)


画面をスクロールすると、

自分でも引くくらいの長文。


“幸せ”

“あの日のこと”

“遠いです”


全部、本音。

全部、言いたいこと。


でも、

全部、送れない。


(……なに書いてるの私……)


顔が熱くなる。

耳まで熱い。


でも、

消す前に読み返してしまう。


(……ほんとは、言いたいんだよね)


胸の奥がじんわり痛くなる。


葵はスマホを胸に抱え、

小さく息を吐いた。


(……でも、送れない。

 これは絶対に送れない)


震える指で、

“幸せ”の行を選択する。


削除ボタンに触れた瞬間、

胸がちくっとした。


(……消すしかないよね)


“あの日のこと”も消す。

“遠いです”も消す。


画面がすっきりしていくほど、

胸の奥が少しずつ痛くなる。


(……でも、まずは書けた。

 ここから整えよう)


昼休みが終わってしまう。

また後で整えて…ちゃんとお返事しよう。

葵は向き合う覚悟を決めた。

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