止まらない思い
「グラスホッパーは前から気になってて、
あの日はちょっと勇気を出して頼みました。
ミントの香りがして、甘くて、でも軽くて、
飲んだ瞬間に気持ちがふっと楽になって……
“幸せ”って書いてあったので、
なんか、あの日のことを思い出してしまって……
店長の投稿も思い出して……
あ、すみません、変なこと言ってますね……
味はすごく好きでした。
また飲みたいなって思いました。
……なんで今北海道なんですか。
遠いです。」
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書き終えた瞬間、
葵は固まった。
(……長っ!!
ていうか、気持ち出すぎ……!
こんなの送れない……!)
画面をスクロールすると、
自分でも引くくらいの長文。
“幸せ”
“あの日のこと”
“遠いです”
全部、本音。
全部、言いたいこと。
でも、
全部、送れない。
(……なに書いてるの私……)
顔が熱くなる。
耳まで熱い。
でも、
消す前に読み返してしまう。
(……ほんとは、言いたいんだよね)
胸の奥がじんわり痛くなる。
葵はスマホを胸に抱え、
小さく息を吐いた。
(……でも、送れない。
これは絶対に送れない)
震える指で、
“幸せ”の行を選択する。
削除ボタンに触れた瞬間、
胸がちくっとした。
(……消すしかないよね)
“あの日のこと”も消す。
“遠いです”も消す。
画面がすっきりしていくほど、
胸の奥が少しずつ痛くなる。
(……でも、まずは書けた。
ここから整えよう)
昼休みが終わってしまう。
また後で整えて…ちゃんとお返事しよう。
葵は向き合う覚悟を決めた。




