519/615
言葉が溢れて止まらない
昼休み。
社食のざわめきの中、
葵はいつものようにスマホを開いた。
通知の欄に、見慣れない名前がある。
「大和」
一瞬、呼吸が止まった。
(……え?
店長……?
DM……?)
指先が震える。
画面をタップするのが怖い。
でも、見たい。
意を決して開く。
> この前、グラスホッパー飲んでたよね。
> 俺は対応できなかったけど、
> ちょっと気になってた。
> 味、どうだった?
読み終えた瞬間、
胸の奥がじわっと熱くなる。
(……見てたんだ)
(気になってたって……)
(味どうだった?って……これ……)
社食のざわめきが遠のく。
自分の鼓動だけがやけに大きい。
返事をしなきゃ。
でも、何を書けばいいのか分からない。
(落ち着け……落ち着け……)
スマホを伏せる。
でも、すぐにまた手に取ってしまう。
(……すぐに返したい)
(でも、変に思われたくない)
(でも、嬉しい……)
胸の奥がざわざわして、
言葉がまとまらない。
葵は深呼吸をして、
そっとメモアプリを開いた。
(……まずは書いてみよう)
指が画面に触れた瞬間、
言葉が溢れて止まらなくなる…




