気持ちを受け取る
その頃、
北海道の夜。
大和はふと、
葵の投稿をもう一度開いた。
(……あれ?)
文章が増えている。
「知らないで投稿したけど、
意味を知って少し驚いた。」
(……編集したのか)
意味を知らなかった。
その一文に、
さっきまで膨らんでいた期待が一度しぼむ。
(そうだよな。知らずに頼んだだけだ)
そう思うのに、
その下のタグが目に引っかかった。
#言葉の代わりに出す一杯
大和が夜の灯-tokyo-のために考えた言葉。
言葉にできない気持ちを、
無理に言葉にしなくていい。
そっとカクテルに乗せる 。
それで伝わるものがある。
そんな想いを込めたコンセプト。
(……なんで、これを)
葵がこのタグを使う理由なんて分からない。
ただ雰囲気で選んだだけかもしれない。
でも──
意味を知ったうえで、
この言葉を添えたという事実が、
胸の奥に静かに刺さる。
再会した夜の葵の顔が浮かぶ。
跳ねた心臓。
もっと話したいと思ってしまった自分。
(期待しちゃいけない)
ずっとそう言い聞かせてきた。
年齢差も、
立場も、
距離も、
全部が“違う”と言っている。
でも──
画面に残る短い言葉が、
その“禁止”をそっと揺らす。
(……期待しても、いいのかもしれない)
胸の奥で、
静かに何かがほどけていく。
葵がどんな気持ちで編集したのかなんて、
分かるはずもない。
まさか、
画面の向こうで
少しだけいじけているなんて
想像もしていない。
ただ、
抑えていた感情の蓋が、
静かに外れ始めていた。




