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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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ギムレットに揺れる大和

ギムレットの写真を閉じたあと、

大和はしばらく動けなかった。


胸の奥に、

小さな波紋のような期待が広がっていく。


(……期待しても、いいのか?)


思った瞬間、

自分でその考えを押しつぶす。


期待なんて、

してはいけない。


自分は葵より11年も年上で、

今は北海道にいる。

何よりバイトと店長の関係だった。


そんな立場で、

何を期待するというのか。


なのに──

胸の奥で跳ねた感情は、

どうしても消えてくれなかった。


(……あの日のせいだ)


夜の灯-tokyo-で再会した日のことが、

鮮明によみがえる。


カウンター越しに葵の顔を見た瞬間、

心が跳ねた。


理由なんて分からない。

ただ、

もっと話したいと思った。

もっと顔を見ていたいと思った。


そんなふうに思ったのは、

いつ以来だっただろう。


他にもバイトはたくさんいた。

いろんな人と関わってきた。


でも葵だけは、

何年経ってもふと思い出す。


(……俺は、及川さんのことを……)


言葉がそこで止まる。


“好き”と言うには軽すぎる。

“特別”と言うには曖昧すぎる。

“忘れられない”と言うには、まだ早い。


どの言葉も、

しっくりこない。


ただひとつだけ確かなのは──

葵のギムレットひとつで、

こんなにも心が揺れるということ。


“遠い人を想う”。


(……俺のこと、想ってくれたのか?)

(…いや、意味なんてないかもしれない)


期待してはいけない。


でも


(……意味なんて知らずに頼んだだけかもしれない)

そう思うほど、期待してしまう自分が怖くなった。

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