509/615
大和のリール
北海道の出店地に到着して、
荷物を置くより先にリールを撮影した。
いつものような撮影者はいない。
だから大和は、
風景や室内をゆっくりと映しながら話し始める。
> 「灯 -tokyo-、昼も夜も応援ありがとうございます」
> 「皆さまのおかげで、1ヶ月延長が決まりました」
> 「本当に嬉しいです」
このあと続ける言葉を思うと、
カメラがわずかに揺れた。
ここは東京ではない。
映るのはコンクリート打ちっぱなしの空間。
また一から作り上げる場所。
> 「僕は次の出店地に来ています」
> 「まだ詳しい場所は言えませんが……北海道です」
> 「灯 -Hokkaido- もよろしくお願いいたします」
撮影終了のボタンをタップする。
北海道の澄んだ、ひんやりした空気。
吐いた息は白くほどけていく。
大和と葵。
同じ方向を向いているのに、
同じ速度では歩けない。
同じ気持ちを抱えているのに、
同じ場所にはいられない。
また季節が進もうとしていた。




