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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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大盛況でお店に入れなくなる

夜の灯 -tokyo- の前に着いた瞬間、

胸の奥がすっと冷えた。


店の前には、

見たことのないほどの行列。


「本日の整理券は終了しました」

立て札が風に揺れている。


(……やっぱり、今日も入れないんだ)


グラスホッパーを頼んだあの夜から、

ずっと考えていた。


次は何を伝えよう。

どんな気持ちを一杯に込めよう。


そして見つけたのが──


キール。

意味は『あなたに出会えて良かった』。


(……これだ)


そう思った瞬間、

胸が熱くなった。


でも、

その気持ちを伝える場所に、

今日も入れない。


行列の最後尾に並んでみる。

でもスタッフが申し訳なさそうに言う。


「すみません、今日はもう……」


(……そうだよね)


分かっていた。

分かっていたのに、

足は勝手にここまで来てしまった。


店の中から聞こえる賑やかな声。

黒シャツの大和の姿は見えない。


(……顔を見たいのに)


(伝えたいのに)


胸の奥が、

じんわりと痛む。


帰り道、

スマホの画面に映る“キール”の写真を見つめる。


(次こそ、これを伝えたい)


でも、

いつ店に入れるか分からない。


それでも、

気持ちだけは前に進んでいた。

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