余韻にひたる
会社に戻ると、
女子たちは席に着くなり一斉に話し始めた。
「スイーツ、めっちゃ美味しかったよね!」
「プリンの層きれいすぎ!」
「店内も可愛いし、写真撮りたかった〜」
「てかさ、あの奥の人、大和さんだよね?
動画に出てた人!」
葵は笑って頷きながら聞いていた。
でも、
頭の中はずっと別のことでいっぱいだった。
(……目が、合った)
ほんの一瞬。
でも確かに、大和の手が止まった。
視線がぶつかった。
そのあとすぐに仕事に戻ったけれど、
あの一瞬が胸の奥でずっと熱を持っている。
「夜のバーも行きたいよね〜」
「大人っぽくて絶対いい感じじゃん」
「今度みんなで行こうよ!」
同僚たちの声が弾む。
葵も笑って相槌を打つ。
「……そうだね。行けたらいいね」
でも、
胸の奥では別の言葉が静かに浮かんでいた。
(……夜は、1人で行ってみたい)
理由なんて言えない。
言えるはずがない。
ただ、
昼に見た大和の横顔が、
照明に照らされた手元が、
胸の奥でずっと揺れていた。
(……会えるわけないのに)
そう思うのに、
気持ちは静かに膨らんでいく。
パソコンを開いても、
資料を見ても、
頭の片隅にはずっと
“白いコックコートの背中”が残っていた。
(……夜、どうしよう)
その問いが、
午後の仕事中ずっと消えなかった。




