本気の告知
工事中の店内は、
昼間よりも静かだった。
照明テストの光が、
カウンターの木目を柔らかく照らしている。
(……ここからが勝負だ)
大和は深く息を吐き、
広告代理店から届いたデータを開いた。
- 昼のスイーツの写真
- 夜のバーの影の落ちるカウンター
- 期間限定の文字
- そして、大和が仕込みをしている“横顔”が一瞬だけ映る短い動画
「本当に、僕なんか映して大丈夫なんですか」
担当者は笑った。
「大和さんの雰囲気がいいんですよ。
“行きたい”って思わせる空気があるんです」
大和は照れくさくて、
視線を逸らした。
(……そんなこと、言われたの初めてだな)
でも、
悪くない気分だった。
スマホを取り出し、
投稿画面を開く。
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灯 -tokyo-
新業態、始めます。
昼はスイーツ、夜は小さなバー。
期間限定で、東京にて。
広告も順次公開されます。
どうぞよろしくお願いします。
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投稿ボタンを押す。
その瞬間、
胸の奥が静かに熱くなった。
(……見てくれるだろうか)
名前は思い浮かべない。
でも、
“誰か”の顔が浮かぶ。
工事の音が再び響き始め、
大和は気持ちを切り替えるように
カウンターの高さを再確認した。
(やるべきことは山ほどある)
でも、
心の奥では確かに何かが動き始めていた。




