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もしも
午後の会議が終わり、
デスクに戻った葵は、
資料を開いたまま深呼吸した。
(……仕事しないと)
そう思ってパソコンに向き直った瞬間、
スマホが震えた。
「yamatoが新しいリールを投稿しました」
(……店長)
開くか迷う。
でも、開いてしまう。
画面には、
見たことのないスイーツの断片。
カウンターの木目。
照明の影。
(……新しい挑戦、ついに始まったんだ)
胸がじんわり熱くなる。
大和の手元は、
相変わらず丁寧で、
迷いがなくて、
見ているだけで胸が締めつけられた。
(……会いたい、なんて)
そんな気持ちを押し込んで、
パソコンに向き直る。
でも、
心の奥では静かに芽が育っていた。
(……オープンしたら、行けるかな)
その“もしも”が、
午後の仕事を少しだけ甘くした。




