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大和の新しい挑戦
工事中の店内は、
木の匂いが濃く残っていた。
カウンターの天板はまだ仮置き。
照明も仮設のまま。
床には工具が散らばり、
新しい店の“骨格”だけが見えている。
大和は職人さんと図面を見ながら、
カウンターの高さを指で示した。
「ここ、あと少しだけ低くできますか。
……スイーツの層がきれいに見える高さにしたくて」
職人さんが頷く。
(昼はスイーツ、夜はバー。
どっちの空気も壊さない高さにしないと)
妥協できない。
この店は“挑戦”そのものだから。
北海道と東京を行き来しながら、
ようやく掴んだチャンス。
大和はスマホを取り出し、
試作中の“二色プリン”にカメラを向けた。
まだ公表はできない。
でも、
“挑戦している自分”を残しておきたかった。
録画ボタンを押す。
湯煎から上げたプリンの表面が揺れる。
スプーンが沈む瞬間、
二色の層が光を受けて震えた。
(……見てくれるだろうか)
そんなことを思ってしまい、
自分で苦笑する。
「よし、今日の分はこれでいいか」
スマホをポケットに戻し、
次の作業に取りかかった。
(……会いたい、なんて)
胸の奥で芽生えた気持ちを、
仕事の忙しさで押し込むように。




