大和の返事
「大和さん、今日もお願いします〜。
前回のオフレコトーク、めっちゃ好評で!」
会議室の隅。
簡易ライトが点いて、白い壁に柔らかい影が落ちていた。
スタッフがカメラを構えながら笑う。
「本番の前に、ちょっと雑談いいですか?
最近はこういう自然な会話も、そのまま使わせてもらってて」
大和は苦笑しながら頷いた。
「なるほど……そういう感じなんだ」
「そうなんですよ。
あ、そういえば──」
スタッフがスマホを見せてくる。
「このラテの写真、可愛かったです。
大和さんってブラック派だと思ってました。
ラテアートとか、意外ですよね〜」
大和は一瞬だけ言葉を失う。
(……意外、か)
あのラテは、
ただの気まぐれじゃない。
葵の投稿を見て、
胸の奥がふっと動いて、
気づいたら店に入っていた。
「たまには……ね」
とだけ答える。
スタッフは笑いながら続けた。
「あのお店って、料理も美味しいですよね!」
大和は視線を少し落とす。
(……やっぱり、あの店のランチだったのか)
「そうそう。
あのお店、料理もおすすめ。
僕、今度はディナーで使おうと思ってます。
ちょっと赤ワイン片手に……“ごほうび”って感じで」
「うわ、いいですね〜! ワイン似合う! 大人の男!!
このあと本番行こうと思ったんですけど──」
スタッフが急に笑い出した。
「もう今日は、今のとこ全部使って終わります!」
「え? 本番は? あの打ち合わせは?」
「今日はドッキリで、大和さんを深掘りの回でしたー」
大和は一瞬だけ呆気にとられたあと、
小さく息を吐いた。
(……もう、しょうがないな)
そう思いながら、
カメラの向こうに柔らかい表情を向けた。




