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同じ味を同じ場所で
休日。
葵はその店の前に立っていた。
胸が少しだけ震える。
(……来ちゃった)
店内に入ると、
大和の投稿で見た光景が
静かに広がっていた。
同じラテを頼む。
運ばれてきたカップを見て、
息が止まる。
(……同じだ)
ミルクの白が、
雲みたいにふわっと広がっている。
写真を撮る。
でも、投稿はしない。
(これは……載せられない)
胸の奥が熱くなる。
代わりに、
ランチメニューをそっと撮る。
光の入り方が綺麗だった。
皿の縁の小さな欠けも、
なんだか愛おしい。
#ひとりごはん
#午後のごほうび
投稿ボタンを押すと、
胸の奥がじんわりと温かくなった。
(……店長、気づくかな)
大和のフォロワーに気づかれるのは困る。
でも、
店長だけには気づいてほしい。
そしてふと、
自分の左手を見る。
指輪のない日常にも、
もうすっかり慣れていた。




