ラリーが続く
洗濯物を抱えたまま、
葵はベランダに出た。
風が少し冷たくて、
空は淡い青にほどけていた。
(……きれい)
特別な構図じゃなくていい。
ただの空でいい。
でも、この気持ちは確かに“続いている”。
そう思った瞬間、
スマホを向けてシャッターを切った。
青い空。
白い雲。
どこにでもある朝の風景。
#深呼吸の朝
#すこしだけ前へ
投稿ボタンを押すと、
胸の奥がふっと軽くなった。
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買い物を終えた帰り道、
葵はカフェの前で足を止めた。
(……入ろう)
窓際の席に座り、
お気に入りのココアを頼む。
甘い香りがふわっと広がる。
そっとテーブルに置くと、
自然とカップを左側に寄せていた。
シャッターを切る。
#お気に入りのココア
#整える時間
投稿したあと、
胸の奥がじんわりと熱くなる。
(……店長、見てくれるかな)
そんなことを思ってしまう自分に、
少しだけ苦笑した。
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電車を待ちながら、
大和はスマホを開いた。
葵の投稿が目に入る。
青い空。
柔らかい光。
そして──
左側に寄せたココア。
胸の奥が、
静かに揺れた。
(……続けてる)
大和は、
近くのカフェに入り、
ラテを頼んだ。
運ばれてきたカップを見て、
ふっと息が漏れる。
ミルクの白が、
雲みたいにふわっと広がっていた。
(……空みたいだ)
テーブルの右側にそっと置き、
シャッターを切る。
#今日はラテ
#アートが秀逸
投稿すると、
胸の奥がじんわりと温かくなった。
右と左。
空と雲。
朝と昼。
言葉はないのに、
確かに呼吸が続いている。
その事実だけで、
今日が少しだけ特別に思えた。




