呼吸が合う朝
部屋に差し込む朝の光の中で、
大和は淹れたコーヒーをぼんやり眺める。
ゆっくりと立ちのぼる湯気に癒され、
なんとなく、スマホを手に取る。
昨夜の乾杯の構図が、
まだ胸の奥に残っていた。
右側に寄せた自分のジョッキ。
左側に寄せた葵のグラス。
あの向かい合う形が、
どうしても頭から離れない。
大和は、
白いカップをテーブルの右側にそっと置いた。
光の入り方が綺麗だった。
それだけの理由で、
写真を一枚撮った。
#いい朝
#今日もがんばろう
投稿ボタンを押すと、
胸の奥が少しだけ軽くなった。
---
通勤前のキッチンで、
葵はスマホを開いた。
大和の投稿が目に入る。
白いカップ。
朝の光。
そして──
右側に寄せて置かれたコーヒー。
胸が、
ふっと温かくなった。
(……店長)
昨夜の乾杯の構図が蘇る。
右と左。
向かい合う形。
気のせいじゃなかった。
そう思った瞬間、
指先が自然に動いた。
葵は、
自分のカップを左側に置いて写真を撮った。
柔らかい光が差し込むキッチン。
湯気が少しだけ揺れている。
#いってきます
#いい朝
投稿したあと、
胸の奥がじんわりと熱くなった。
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大和は、
移動前にスマホを開いた。
葵の投稿が目に入る。
左側に寄せたカップ。
柔らかい光。
控えめなタグ。
大和は、
息をひとつだけ飲んだ。
……やっぱり。
胸の奥で、
静かに何かがほどけていく。
言葉はない。
説明もない。
でも、
確かに呼吸が合っている。
それだけで、
今日が少しだけ違う朝に思えた。




