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及川さんとの記憶
及川さんの投稿を見つめていると、
記憶の底に沈んでいた“19歳の及川さん”が
ふっと浮かび上がった。
居酒屋の裏口で、
緊張した顔で立っていた少女。
「今日から入りました、及川です」
声が少し震えていて、
でも目だけはまっすぐだった。
まだ未成年で、
まかないのときもお茶しか飲めなくて。
「店長、これってどうしたらいいですか」
「ビールって、苦いんですよね?」
そんなふうに、
なんでも素直に聞いてきた。
大和はそのたびに、
「まだ飲めないだろ」と笑っていた。
及川さんは頬をふくらませて、
「いつか飲めるようになりますよ」
なんて言っていた。
その“いつか”が、
今、画面の中にある。
右側に寄せた自分のジョッキ。
左側に寄せた及川さんのグラス。
18年越しの乾杯。
> ……大人になったんだな。
言葉にすると、
なぜか少し切ない。
でも同時に、
温かいものが胸の奥に広がっていく。
向かい合うグラスの向こうに、
19歳の及川さんが笑っている気がした。




