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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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朝のかわいい雲

朝、玄関を出た瞬間、

ふと見上げた空に

ぽつんと丸い雲が浮かんでいた。


昨日の夜の余韻がまだ胸の奥に残っているせいか、

その雲がなんだか可愛らしく見えた。


葵はスマホを取り出し、

そっと一枚だけ写真を撮る。


深く考える前に、

そのまま投稿した。


> 「朝、見上げたら可愛い雲がいた。」


投稿ボタンを押したあと、

胸の奥が少しだけ軽くなった気がした。


虹の写真──

結婚指輪がうっかり写り込んだままの投稿で

止まっていた自分のページが、

ようやく動き出したような感覚。


バッグを肩にかけて駅へ向かうと、

通勤時間の駅前はスーツ姿の人たちであふれていた。


その中を歩いていると、

ふと視界に入った男性のネクタイの色や、

肩にかけたコートの形が

昨日の大和の姿と重なってしまう。


> ……店長のほうが、似合ってた。


そんなことを思ってしまって、

自分で自分に驚く。


胸の奥が、

またじんわりと熱くなった。


電車がホームに滑り込んでくる音がして、

葵はスマホを握り直した。

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