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朝のかわいい雲
朝、玄関を出た瞬間、
ふと見上げた空に
ぽつんと丸い雲が浮かんでいた。
昨日の夜の余韻がまだ胸の奥に残っているせいか、
その雲がなんだか可愛らしく見えた。
葵はスマホを取り出し、
そっと一枚だけ写真を撮る。
深く考える前に、
そのまま投稿した。
> 「朝、見上げたら可愛い雲がいた。」
投稿ボタンを押したあと、
胸の奥が少しだけ軽くなった気がした。
虹の写真──
結婚指輪がうっかり写り込んだままの投稿で
止まっていた自分のページが、
ようやく動き出したような感覚。
バッグを肩にかけて駅へ向かうと、
通勤時間の駅前はスーツ姿の人たちであふれていた。
その中を歩いていると、
ふと視界に入った男性のネクタイの色や、
肩にかけたコートの形が
昨日の大和の姿と重なってしまう。
> ……店長のほうが、似合ってた。
そんなことを思ってしまって、
自分で自分に驚く。
胸の奥が、
またじんわりと熱くなった。
電車がホームに滑り込んでくる音がして、
葵はスマホを握り直した。




