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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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文字だけのリール

結衣とのDMを終えた夜。

湯気の立つマグを手に、

葵はソファに沈み込んだ。


胸の奥に残ったざわめきが、

まだ消えない。


> 東京にしばらく行く──

> そんなこと、言ってたんだ。


その言葉だけが、

何度も頭の中で反芻される。


スマホを置いたまま、

ぼんやり天井を見ていたときだった。


テーブルの上で、

スマホがふっと光った。


通知の文字を見た瞬間、

葵の心臓が小さく跳ねた。


“リールを投稿しました”


大和のアカウント。


思わず息を呑む。


久しぶりの更新。


指先が勝手に動いて、

画面を開いた。


---


動画が始まる。


映っているのは、

厨房の一角を切り取ったような静止画。

湯気の立つ鍋のアップ。

だしの色が透けるような写真。

そして、

東京の街並みを遠くから撮った一枚。


どれも、

大和本人は映っていない。


その上に、

白い文字がふわりと流れ始めた。


「リール久しぶりになっちゃいました」


数秒後、

次の文字が重なる。


「新しい挑戦の準備中です」


そして最後に、

静かに一文が浮かぶ。


「しばらく東京に滞在します」


胸の奥が、

じんわりと熱を帯びる。


声はない。

姿もない。

ただ文字が流れているだけ。


なのに、

画面の向こうに

確かに“彼”がいた。


葵はスマホを胸に引き寄せた。


> 久しぶりに、大和の近況に触れられた。

> それだけで、嬉しい。


そう思った瞬間、

画面に最後の一文がふわりと現れた。


「明日21時に、もう一本リールを上げます」

「次は、ちゃんと映ります」


その言葉が、

静かに胸の奥で灯りのようにともった。

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