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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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去年の冬の記憶が動き出す

冬の匂いがした瞬間、胸の奥がざわついた。

冷たい空気が頬に触れただけで、

一年間そっと蓋をしていた記憶が、静かに目を覚ます。


去年の冬。

あの夜のことを、葵はずっと思い出さないようにしてきた。


でも、冬はいつも勝手に連れてくる。

忘れたふりをしていたものを、

そっと手のひらに戻すみたいに。


あの夜──

大和のLIVEを見てしまった瞬間、

胸の奥がぎゅっと掴まれた。


気づいたら、サンダルのまま外に飛び出していた。

冬の夜風が足元を刺すように冷たかったのに、

走ることをやめられなかった。


「会いたい」と思ったわけじゃない。

ただ、見たかった。

それだけだった。


息が切れるほど走って、居酒屋「(あかり)」へ向かったあの日。

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