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気付けばあの季節が来ていた
秋になって、部屋に小さな観葉植物を置いた。
水をやるたびに、
「生きてるんだな」
と自分に言い聞かせるように思った。
ひとりの部屋が、ようやく“自分の部屋”になっていく。
俊介の荷物が入った段ボールを見ても、もう心は揺れなかった。
仕事は相変わらず忙しく、
帰ってきては簡単なごはんを作り、
洗濯物を畳んで、
眠るだけの毎日。
大和のことは、
ふとした瞬間に思い出すだけになっていた。
思い出しても、どうすることもできないから。
「……大丈夫」
そう言い聞かせて、また次の日を迎える。
気づけば、街に冬の匂いが漂っていた。
冷たい風が頬を撫でた瞬間、
胸の奥が、ほんの少しだけざわついた。
あの冬の記憶が、
静かに目を覚まそうとしていた。




