440/455
年末の静かな夜、少しだけ広い部屋
年末の街は、
どこもかしこも急ぎ足だった。
スーパーの袋を提げた人たちが
肩をすぼめて歩いていくのを横目に、
私はゆっくりと家へ向かった。
玄関の扉を開けると、
部屋はいつもより少し広く感じた。
昨日、
小さなクリスマスツリーを片付けたからだ。
飾っていた期間は短かったのに、
ツリーがなくなると、
部屋の空気がすっと静かになった。
“ひとりの冬”が戻ってきたような気がした。
でも、その静けさはもう寂しさだけじゃない。
お湯を沸かして、
温かいお茶を淹れる。
湯気がゆっくりと立ちのぼるのを眺めながら、
ソファに腰を下ろした。
俊介の荷物を箱に入れたクローゼットは、
扉を閉めれば何も見えない。
視界から消えただけで、
部屋の空気がこんなにも変わるのかと思う。
胸の奥の重さはまだある。
でも、
その重さに押しつぶされるような感覚はなくなっていた。
テレビをつけても、
特に観たい番組はない。
ただ、
音が欲しくてつけただけ。
年末特有のざわざわした笑い声が、
静かな部屋に少しだけ温度を足してくれる。




