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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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自分のための時間と小さな勇気

資格の勉強を始めたのは、

ほんの気まぐれだった。


本屋でテキストを手に取ったとき、

紙の匂いが新しい季節の始まりみたいに感じた。


「来年は、もう少し自分のために時間を使ってもいいのかもしれない」


そんな言葉が、

自然に胸の中に浮かんだ。


夜、机に向かってページを開く。

蛍光ペンの色が、

静かな部屋に小さな彩りを落とす。


勉強なんて久しぶりで、

最初は集中できなかったけれど、

ページをめくる音が心地よかった。



俊介に連絡ができるようになったのは、

その数日後だった。


箱詰めした荷物を見ていたら、

ふと、

「もう連絡しても大丈夫かもしれない」

と思えた。


スマホを手に取る。

画面がやけに明るく見える。


メッセージ欄を開くと、

俊介からの優しい言葉ばかり詰まっていた。


自分からメッセージを送るのは

いつぶりだろう…。

指が震える。

でも、逃げなかった。


「荷物、いつでも取りに来ていいよ」


短い言葉。

それでも、

送信ボタンを押すまでに

何度も深呼吸をした。


送った瞬間、

胸の奥がじんと熱くなる。


返事は来ない。

でも、不思議と心は乱れなかった。


前へ、

ほんの少しだけ進めた気がした。

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