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心の整理
俊介が置いていった荷物を、
少しずつ片付け始めた。
きっかけは、
年末の掃除をしようと思っただけだった。
でも、クローゼットの扉を開けた瞬間、
胸の奥が少しだけざわついた。
シャツ、ネクタイ、
読みかけの本、
使いかけの整髪料。
どれも、
“ここにあるのが当たり前だったもの”ばかり。
ひとつ手に取るたびに、
17年分の記憶が静かに浮かんでは沈んでいく。
でも、涙は出なかった。
ただ、
胸の奥が少しだけ重くなる。
その重さを抱えたまま、
ひとつずつ丁寧に畳んで、
段ボール箱に入れていく。
捨てるわけじゃない。
忘れるわけでもない。
ただ、
“いつ取りに来てもいいように”
整えておくだけ。
箱のふたを閉じると、
部屋の空気がほんの少し変わった気がした。
視界から消えるだけで、
こんなにも違うのかと思う。
部屋の隅で、
小さなクリスマスツリーが静かに光っていた。
その灯りが、
箱の影をやわらかく照らしていた。




