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春の空気とうらはらに
3月に入った途端、
季節だけが先に春になった。
朝の光はやわらかくて、
ベランダの風は少しだけあたたかい。
でも、私の中はまだ冬のまま。
2月の冷たさが、胸の奥に残っている。
リビングの隅には、
開けられないままのクリスマスツリーの箱。
冬の始まりに出せなかったものが、
春になってもそのまま置かれている。
スマホには、
俊介からの通知だけが毎日積み重なっていく。
本文は開かない。
開いたら、向き合わなきゃいけないから。
私は通知だけを見て、
画面を伏せる。
春の光は明るいのに、
心はまだ冬のままだった。




