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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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すれ違う生活の音

2月に入ってから、

家の中の空気は、もう完全に固まってしまった。


朝、玄関のドアが閉まる音で目が覚める。

俊介が出ていく気配だけが、薄く残る。


「……いってらっしゃい」


声にはしない。

胸の奥でだけ転がって、

そのまま消えていく。


キッチンでコップに水を入れると、

テーブルの上には、

昨日の夜、俊介が置いたままのマグカップ。


触れない。

見ないふりをする。


スマホには、

LINE通知が光っている。


開かない。

開けない。


画面を伏せる。


平日は、顔を合わせることがない。

私が帰る頃には、俊介はもう部屋にいない。

電気だけがついていて、

生活の痕跡だけが静かに残っている。


洗濯物は別。

食事も別。

会話はゼロ。


同じ家にいるのに、

まるで違う場所で暮らしているみたいだった。


でも…

休日だけは、どうしても避けきれない。


キッチンに水を取りに行ったとき、

ちょうど俊介が玄関で靴を履いていた。


一瞬、目が合いそうになって、

私は視線を落とす。


俊介も、何も言わない。

ただ、靴紐を結ぶ手が、

ほんの少しだけ止まった。


その沈黙が、

言葉より重かった。


ドアが閉まる音だけが響く。


私はコップを握ったまま、

しばらく動けなかった。

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