夫婦の終わり
俊介の言葉が、
ひとつひとつ胸に落ちていく。
「葵の心の中に……ずっと誰かがいるのは、分かってた」
「代わりでいいと思ってた。
俺が埋められれば、それでいいって……ずっと、そう思ってた」
「でも……もう、代わりにもなれてないんだよな」
葵は何も言えなかった。
俊介の優しさが、
今はただ痛かった。
そしてふと気づく。
俊介は、私がずっとLINEを未読のままにしていたことを、
責めようとしなかった。
その沈黙が、
優しさなのか、諦めなのか、
どちらとも言えなくて胸が締めつけられる。
俊介は、ゆっくりと私を見た。
「その“誰か”が……大和さんなんだろ」
葵は目を伏せた。
否定しなかった。
できなかった。
沈黙が、答えになった。
俊介は責めなかった。
怒らなかった。
ただ、静かに言った。
「葵が自分から言えないのも……分かってる。
だから……俺から言うよ」
息が止まる。
そして──
> 「少し……距離を置かないか。
> このままじゃ、どっちも苦しいだろ」
その瞬間、
喉の奥がツンとした。
涙にはならない。
でも、確かに痛い。
胸の奥が、
ゆっくり沈んでいく。
葵は小さくうなずいた。
> 「……うん」
その一言を口にした瞬間、
自分の声が少しだけ震えた。
声になったのかな。
喉の奥が熱くてもっとツンとしてくる。
俊介の料理の湯気が消えていく。
その匂いだけが、
胸の奥に残った。
あの頃の幸せも、
今日の痛みも、
全部まとめて沈んでいくようだった。




