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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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逃げないと決めた葵

玄関の前で、葵は足を止めた。


いつもなら真っ暗なはずの窓に、

今日は灯りがともっている。


(……あれ?)


胸の奥がふっと揺れた。


灯りの漏れる自宅は、

思っていたより温かく見えた。


仕事で疲れた日でも、

あの灯りがついているだけで

ほっとした時期があった。


(俊介……帰ってる?)


驚きと、

言葉にできないざわつきが同時に押し寄せる。


最近は、

葵が帰る頃にはいつも真っ暗だった。

俊介は遅くまで仕事で、

すれ違いが当たり前になっていた。


鍵を回し、

そっとドアを開ける。


温かい空気がふわりと流れてきた。


味噌汁の匂い。

焼き魚の香り。

ほうれん草のおひたし。


全部、俊介の料理だった。


(……懐かしい)


胸の奥がじんわり熱くなる。


順調に暮らしていた頃──

仕事で疲れて帰ってきても、

俊介の料理があれば、それだけでほっとした。


「おかえり」

「今日はどうだった?」


そんな何気ない会話が、

当たり前のようにあった。


その当たり前が、

いつの間にか遠くなっていた。


リビングに足を踏み入れると、

俊介が座っていた。


久しぶりに見る俊介は、

少しやつれて見えた。


頬が少しこけて、

目の下に薄い影があった。


(……こんな顔、させてたんだ)


胸の奥がきゅっと縮む。


俊介が顔を上げた。


「……葵。少し、話せるか」


その声は、

怒りでも責めでもなく、

ただ、覚悟だけを含んでいた。


葵は息を飲んだ。


ここで、

逃げられないと悟った。

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