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胸の奥に残る灯り
目が覚めた瞬間、
胸の奥がふわっと温かかった。
昨夜のことを思い出す。
冬の冷気。
白い息。
サンダルの足先の痛み。
そして──
光に照らされた横顔。
(……見えたんだよね)
夢みたいで、
でも夢じゃない。
布団の中で、
葵はそっと目を閉じる。
(嬉しかったな……)
会えなかった。
声をかけられなかった。
名前も呼べなかった。
それでも、
一瞬だけ同じ場所にいた。
それだけで、
胸がぎゅっとなる。
スマホを開く。
大和のアカウントには、
昨夜のLIVEのアーカイブが上がっている。
(コラボ終わりって言ってたよね……)
つまり、
もうすぐ北海道に戻ってしまう。
(……そっか)
少しだけ胸がきゅっとする。
でも、
その痛みすら優しい。
だって──
一目だけでも見れたから。
17年ぶりに、
同じ空気の中にいたから。
(……ありがとう)
誰に向けた言葉か分からないまま、
葵はそっとスマホを胸に抱いた。
外はまだ冬の朝の冷たさ。
でも、
胸の奥には昨夜の灯りが
静かに残っていた。




