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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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葵の帰り道

サンダルの底が、

冬のアスファルトに触れるたびに冷たさが突き上げてくる。


でも、

胸の奥はずっと熱いままだった。


(……いた)

(本当に、いたんだ)


涙が止まらない。

悲しくてじゃない。

苦しくてでもない。


嬉しくて。


声だけでも胸がいっぱいだったのに、

最後の最後で──

光に照らされた横顔が一瞬だけ見えた。


それだけで、

17年分の時間が一気に胸に流れ込んできた。


(夢じゃなかった)

(同じ街にいたんだ)

(同じ夜にいたんだ)


白い息が震える。

涙で視界が滲む。

サンダルの足先は冷えて痛いのに、

心だけはずっと温かい。


歩きながら、

葵は何度も袖で涙を拭った。


でも拭いても拭いても、

次の涙がこぼれる。


(……嬉しい)

(会えなくても、見えただけで……)


胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

でもその痛みは、

どこか優しい。


家の近くまで戻る頃には、

涙はようやく落ち着いてきた。


玄関の前で深呼吸をする。

冷たい空気が肺に入って、

少しだけ現実に戻る。


でも、

胸の奥の灯りは消えない。


(……ありがとう)


誰に向けた言葉なのか、

自分でも分からない。


ただ、

17年ぶりに見えた横顔が、

冬の夜の中で静かに揺れていた。

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