再起動した心──鏡に映る恋の顔
再生ボタンを押すと、明るい店内の映像が流れた。
コラボ撮影の裏側らしく、東京店のスタッフが少し恐縮したように笑っている。
「でも、結局自分たちで回せなくて、大和さんにも色々やってもらっちゃって…。
どちらかというと運営側なはずなのに、迷惑でしたよね? すみません!
もっと頑張ります!」
大和は、スタッフの肩を軽くぽんと叩いて笑った。
「迷惑なわけないだろ。むしろ助けられてばっかりだよ。コラボ楽しんでやってこ!」
その言い方が──
17年前の夜と同じだった。
歩幅を合わせてくれた帰り道。
「迷惑なわけないだろ」と言ってくれた、あの声。
あの横顔。
胸の奥が一気に熱くなる。
映像の中では、料理の撮影が始まっていた。
湯気の立つだし巻き。
カメラマンが緊張したようにレンズを覗き込み、
手元が少し震えている。
「す、すみません……リールに使われると思うと、ちょっと……」
大和はその横にしゃがみ込み、
カメラのモニターを一緒に覗き込んだ。
目線を合わせるように、少し身を屈めて。
「焦らなくていいよ。ゆっくりで大丈夫」
その声が、バイト初日の記憶を引きずり出す。
緊張で手が震えていた私に、
同じ距離感で、同じ優しさで、
「焦らなくていいよ」と笑ってくれた。
(……なんで、今なんだろう)
スマホの小さな画面の中で、
17年前の大和と今の大和が重なる。
胸がじんわり熱くなる。
夜風。
歩幅。
街灯の光。
胸が熱くなった瞬間。
全部が蘇る。
耐えきれなくて、鏡の前に立った。
そこに映っていたのは──
頬が上気して、
目の奥に光が戻っていて、
口元が柔らかい。
恋してる人の顔だった。
私の心は、再起動してしまったようだ。




