412/489
0%の朝──触れられない気持ち
昨夜、私はスマホを鞄から出さなかった。
出せなかった、が正しい。
俊介の通知を見るのが怖くて、触れた瞬間に胸がざわつくのが分かっていて、
だから鞄の奥に押し込んだまま眠った。
朝。
鞄の底から取り出したスマホは、真っ黒で冷たい。
電源ボタンを押しても反応しない。
(……ああ、切れてる)
当然だ。
充電なんてできる状態じゃなかった。
心が0%のまま、昨日は終わった。
「会社で充電すればいいか」
自分にそう言い聞かせて、玄関をそっと閉める。
俊介はまだ寝ている。
顔を合わせずに出られたことに、ほっとしてしまう自分がいる。
駅までの道、胸の奥がざわざわする。
スマホは沈黙しているのに、心だけが落ち着かない。
(……店長、昨日も投稿してたのかな)
考えたくないのに、考えてしまう。
触れられないスマホの重さが、妙に気になった。




