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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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0%の朝──触れられない気持ち

昨夜、私はスマホを鞄から出さなかった。

出せなかった、が正しい。

俊介の通知を見るのが怖くて、触れた瞬間に胸がざわつくのが分かっていて、

だから鞄の奥に押し込んだまま眠った。


朝。

鞄の底から取り出したスマホは、真っ黒で冷たい。

電源ボタンを押しても反応しない。


(……ああ、切れてる)


当然だ。

充電なんてできる状態じゃなかった。

心が0%のまま、昨日は終わった。


「会社で充電すればいいか」


自分にそう言い聞かせて、玄関をそっと閉める。

俊介はまだ寝ている。

顔を合わせずに出られたことに、ほっとしてしまう自分がいる。


駅までの道、胸の奥がざわざわする。

スマホは沈黙しているのに、心だけが落ち着かない。


(……店長、昨日も投稿してたのかな)


考えたくないのに、考えてしまう。

触れられないスマホの重さが、妙に気になった。

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