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顔を合わせない生活
翌朝。
葵は早く起きて、
静かに朝食を作った。
テーブルにそっと置いて、
音を立てないように家を出る。
俊介は、
葵がいなくなった後のキッチンで
ひとりで朝食を食べる。
「ありがとう」
その言葉を言う相手は、
もうそこにいない。
寝室も別のまま。
会話もないまま。
もちろんハグも消えてしまった。
すれ違いが、
日常になっていく。
そしてその日常に、
2人とも少しずつ慣れていく自分が、
いちばん怖かった。
もう戻れなくなる未来が、
ぼんやりと形を持ち始めていた。




