前へ目次 次へ 398/489 いつもの朝食と、違うもの キッチンに入った瞬間、だしの香りがふわっと広がった。 その匂いだけは、いつも通り。 でも、そこにいるはずの葵はいない。 テーブルには、整った朝食。 ご飯。 味噌汁。 焼き鮭。 おひたし。 納豆。 “いつもの朝”が、きちんと並んでいる。 なのに、その横に── ぽつん、と二色のだし巻き。 灯(あかり)で食べたものと同じ色。 同じ切り方。 同じ形。 胸の奥が、きゅっと縮む。 (……なんで、これが今なんだよ…) 考えたくない想像が、勝手に浮かんでくる。