前へ目次 次へ 397/499 おはようが落ちた朝 目を開けた瞬間、胸の奥がざわついた。 家が、静かすぎる。 いつもなら、キッチンから小さく聞こえる。 「おはよう」 あの声が、今日はどこにもない。 布団を抜けて廊下に出る。 空気が冷たい。 洗面所の扉は開いたまま。 リビングの照明もついていない。 人の気配がしない朝なんて、いつ以来だろう。 まだ“異変”と呼ぶほどじゃない。 でも、胸の奥で小さな違和感が膨らんでいく。 (……葵?) 呼んでも返事はない。 その静けさが、じわじわと広がっていく。