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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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だし巻きエピソード

昼休み。

山下はまだ興奮していた。


「大和さん、昔リールでだし巻きの話しててさ!」

「奥さんに“また?”って笑われながら毎日練習してたって!」


俊介の手が止まる。


(……だし巻き?奥さん?毎日?)


山下は気づかず、さらに続ける。


「それがまた可愛いんですよ!奥さんとのやり取りも!」


胸の奥に、冷たいものが落ちた。

だし巻き。

奥さん。

毎日。


葵の二色のだし巻きが、ふっと頭に浮かぶ。


なんで今、その記憶が出てくるんだ。

なんで、こんなに胸がざわつくんだ。


山下は笑っているのに、

俊介の世界だけが静かに沈んでいく。

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