前へ目次 次へ 384/515 夜風と消えないざわめき 店を出た瞬間、夜風がひやりと頬を撫でた。 居酒屋「灯(あかり)」の温かさが遠ざかっていくのに、胸のざわつきだけは消えない。 山下は「いや〜最高だったな!」と満足げに笑っている。 俊介は曖昧に頷くだけだった。 大和の姿。 二色のだし巻きの味。 シャッター音。 胸の奥に残った違和感が、歩くたびに揺れる。 (……なんで、こんな気持ちになるんだ) 夜道は静かなのに、心だけが落ち着かない。 灯の光が背中に遠ざかるほど、ざわつきは強くなっていく気がした。