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第六感
「うわっ、本物だ……!」
奥から大和が姿を見せた瞬間、山下のテンションが跳ね上がった。
さっきまで料理を連写し、
動画まで撮らせてきた山下は、
もう完全に“推し活モード”だ。
「俊介!写真撮ってもらおうよ!
せっかくだし、大和さんと一緒に!」
俊介は反射的に首を振る。
「いや、いいよ」
「何言ってんだよ!
人気の大和さんが“いる日”に来れたんだぞ?
奇跡だって!ほら、写れよー!」
山下の勢いに押され、
俊介は観念して立ち上がった。
胸の奥がざわつく。
表情は硬い。
店員が大和と山下、俊介にスマホを向ける。
山下は満面の笑みで、
二色のだし巻きとビールを誇らしげに掲げていた。
シャッター音が鳴る。
その瞬間、
俊介の胸の奥で、
何かが静かに軋んだ。
山下はすぐに投稿する。
#灯
#大和さん
#二色のだし巻き
#奇跡の予約
#最高の夜
スマホの画面が光るのを見ながら、
俊介はふと、理由の分からない不安に襲われた。
——葵にだけは、見られちゃいけない。
そんな変な勘だけが働いていた。




