前へ目次 次へ 382/489 味と人が繋がる瞬間 そのとき、奥から落ち着いた声が聞こえた。 「お疲れさまです、大和さん!」 俊介は反射的に顔を上げる。 あの日見た男が、 “この味を作った人”として目の前に現れた。 自然体で、落ち着いていて、 スタッフに軽く笑いかけるその姿。 店員が言う。 「二色のだし巻き、今日も大和さんが仕込みました」 俊介の胸が冷たくなる。 葵が作った二色のだし巻き。 大和が考案した二色のだし巻き。 その線が、静かに一本につながった。 (……まさか) でも、考えたくなかった。