前へ目次 次へ 379/489 気配だけ 席に着いた瞬間、山下が嬉しそうに言った。 「いや〜俊介、マジで奇跡だよ。 人気の大和さんが“いる日”に予約取れるなんて、ホントに奇跡!」 俊介の胸がきゅっと痛む。 (……今日、あの人……いるのか) ちょうどそのとき、店員が笑顔で言った。 「大和さん、今日は奥で仕込み中です」 心臓が跳ねた。 姿は見えないのに、 “いる”という事実だけが強く迫ってくる。 山下は気づかずにメニューを開いている。 俊介だけが、静かに息を飲んだ。