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灯(あかり)の空気に飲まれる
扉をくぐった瞬間、空気が変わった。
温かい光と、ふわりと漂う出汁の香り。
外から見たときよりずっと柔らかくて、賑やかで、息づいている。
「うわ、すげぇ……!」
山下はテンション高く店内を見回す。
俊介は、足が半歩だけ遅れた。
胸の奥がざわつく。
(……本当に来てしまった)
客の笑い声、店員の声、料理の音。
全部が混ざり合って、灯という店の“温度”を作っていた。
席に案内される途中、
俊介は無意識に店の奥を見た。
そこに“いるかもしれない人”を探すように。
でも、まだ姿は見えない。
その“見えないこと”が、逆に胸を締めつけた。




