前へ目次 次へ 376/489 灯りの前で 店の前に着くと、夜の居酒屋「灯(あかり)」は温かい光を放っていた。 行列ができていて、店内からは賑やかな声が漏れてくる。 「すげぇ……本当に人気なんだな」 「予約取れてラッキーだったよ」 「なぁ、俊介!」 山下は興奮気味に言う。 俊介は言葉が出なかった。 以前、探りに来たときとはまったく違う熱気。 胸の奥がざわつく。 (ここに……いるのか) 心臓が重くなる。 でも、もう戻れない。 同僚が受付に名前を告げる。 「予約してる山下です!」 俊介は静かに息を吸った。