前へ目次 次へ 374/489 逃げ場のない誘い 定時後、パソコンを閉じた瞬間だった。 同僚の山下が弾む声で駆け寄ってくる。 「俊介!聞いてくれ!」 「灯(あかり)の予約、やーーっと取れたんだよ!」 「だから、絶対今日行くぞ!」 俊介の胸が一瞬止まった。 “今日” “絶対” “やっと取れた” 逃げ道がどこにもない。 「……今日?」 「今日!今日しかない!奇跡だぞこれ!」 山下は完全に行く気で、断る余地なんてなかった。 俊介は観念したように息を吐く。 「……分かった。行くよ」 その瞬間、胸の奥で何かが静かに沈んだ。