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再び灯りへ
夜、俊介は眠れずに天井を見つめていた。
葵は別室で多分、静かにスマホを見ている。
ふたりの距離は、もう元には戻らない。
同僚の言葉が頭をよぎる。
「灯、行ってみない?」
避けていた場所。
でも、確かめたい気持ちが、
静かに、確かに、胸の奥で動き始めていた。
「……行ってみるか。灯」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
葵にも、まだ言わない。
俊介の物語が、吸い寄せられるように“灯”へ向かう。
何かを知ってしまうとしても、このまま悶々としているよりずっといい。
葵と距離が縮まらない今、自分で確かめないと俊介は動けない。
やっぱりあの居酒屋「灯」には何かがある。
そうとしか思えなかった。




