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揺れる葵
仕事から帰り、ひとりの部屋に入ると、
葵は無意識にスマホを開いていた。
画面には、大和のリール。
冬の北海道の空気が、画面越しにふわりと流れ込んでくる。
コメント欄には
「東京の灯にも来てほしい!」
「冬のコラボ楽しみ!」
そんな声が並んでいた。
そして、大和の返信。
「もちろん冬コラボで行きます」
その一文を見た瞬間、
胸の奥が、静かに動いた。
罪悪感ではない。
ただ、気になってしまう。
理由なんて分からない。
社員旅行で北海道の灯りに触れてから、何度も季節は巡った。
忘れたと思っていたのに、
心のどこかにまだ残っていたものが、
ふと顔を出す。
葵はスマホを伏せた。
でも、胸のざわつきは消えなかった。




